MIDI to OSC Deviceの試作とUnityを用いたVJについて 5

2013.11.04りんご飴音楽祭@渋谷WWWでのAZUMA HITOMIさんのVJの技術的なことについて、何回かに分けてまとめていきます。

3DゲームエンジンUnityでのOSC受信処理とVJへの応用

前回まででデバイスとネットワーク関係が整ったので、PC側の実装に入ります。

3Dゲーム開発環境Unityについて

今回のVJでは、本来は3Dゲーム開発環境であるUnityを使いました。Linux界隈の人はUbuntuのGUIと紛らわしいですね。Unityは開発環境が使いやすく、物理エンジンなども統合されていて、インタラクティブなVJ用途にも使えると思い使ってみています。実際、かなり短期間で色んな3Dモデルを取り込んで自由に動かすことができました。
素晴らしい開発環境なのですが、個人的には以下の2点で不満もあります。
まず、Linuxで動く開発環境が無い。正直、このためだけにWindowsを使っています。オフィシャルページにも要望が上がっていて、投票もしていますので、ぜひみなさんも投票してみてください。
もう一つは、バージョン管理システムへの対応がイマイチな点。これに関しては徐々に改善しているらしいので、僕の勉強不足なのかも。

Unityでマルチディスプレイを使用したVJについて

というわけで、物理エンジンをゴリゴリ使ってVJするぜ!と思ったんですが早速問題がひとつ。Unityでは複数のWindowを扱うプログラムを作成できないっぽく、一般的なVJソフトのような操作・Preview画面と出力画面の2画面構成がとれません。たぶん。GUIを一切廃してフルスクリーン1画面にするという手もありますが、さすがに不便です。
そこで今回は、PCをデュアルディスプレイに設定し、VJ出力として使うディスプレイを覆い隠すような大きいWindowを作ることにしました。
unityvjwindow
Window左側にGUI専用画面を用意することで、1つのWindowで出力と操作をする苦肉の策です。
幸い、Unityではカメラオブジェクトの設定により、簡単に上記のような画面構成をとることができます。カメラコンポーネントのNormalized View Port RectのXでWindow内のカメラ表示領域の開始位置を、Widthで幅を設定できます。
unityvjcamera
空いた左側の領域にはGUIを並べたり、情報を表示するわけですが、このままだとシーン切り替えがあった時などに背景がクリアされずに表示が乱れてしまいます。そこで、カメラをもう一つ配置し、GUI領域の背景を描写させました。ProjectionはOrthographicにして、Sizeは0.01とか、最小限に設定します。背景色はVJ画面と区別できる単色にしておきます。さらに、Audio Listenerなど、不要なコンポーネントを削除しておきましょう。そうしないと警告が出ちゃいます。
こうすることで、一般的なVJソフトのように操作画面とVJ出力画面を作れます。複数のシーンで使用することを考え、Prefabを作っておくといいと思います。でもWindowサイズを調整したり、操作中にWindowを最小化しちゃうリスクとかがあるので、もっと良いやり方があれば知りたいところです。

UnityでのOSC受信

作成したデバイスからはPCのIP宛に所定のポートでOSCが流れており、Unityで受信するわけですが、UDPの受信動作をどう実装するかも迷ったポイントの一つでした。
僕はC#のUDP送受信に関しては実装した経験はあるのですが、Unityの流儀的にこういったグローバルな動作をどこでするのが綺麗なのかイマイチわかっていません。動作としてはInputクラスなどが似ているかな、と思うのですが、無理やりStaticに実装するのも変な気がします。
結局今回は、子のGameObjectにBroadcastMessageを投げるスクリプトを作ることにしました。このスクリプトをルートになるようなGameObjectに持たせて、OSC受信を担当させます。OSCによって変化させたいオブジェクトはすべてこの中に配置しました。(ただ、このへんは将来、先のInputクラスを真似た実装にできないかと思案中です。)
OSC受信部分は、みなさん参考にしているらしいこちらのサンプルを参考にしています。
OSC受信を担当するGameObjectには、OSCのParserスクリプトも配置します。OSC受信スクリプトはとりあえずGameObject内のParserにSendMessageし、Parserが内容を見て、必要であればBroadcastします。今回はMIDIデータを使いたいので、メッセージ種類に応じて扱いやすい構造体にしてBroadcastするParserを作りました。例えば、NoteOnがきた時だけ整数配列を送るとか。
このようなルートになるGameObjectを作ることで、中のオブジェクト(のスクリプト)は決まった名前の関数を作るだけで、扱いやすい構造のMIDIメッセージ構造体を受け取れます。今回のVJでNoteOnに応じて物体を動かすスクリプトは、例えばこんな感じ。

void OscMidiNoteReceive(NoteOnMsg msg)
{
  var modnum = (msg.num/2) % Mod;
  if(modnum == Num)
  {
    StartMove();
  }
}

ちょっと詳細な構造をまとめる時間がないので雰囲気だけで申し訳ないですが、ノート番号を定数で割った余りが自分に指定されている番号と一致すれば、動作開始しろってことです。OSC受信オブジェクトによって、中の動作はとても簡素化できます。
ということで、簡単ですがUnity製VJプログラムの構造を書いてみました。そのうちコードサンプルなどをもっと入れてまとめられるといいな、と思います。

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