『トロン:レガシー』(Ω)

映像だけを期待して観たけど、話も結構興味深いものだった。
本編は星4つ、しかし戸田奈津子のアホな字幕が台無しにしている。
ちゃんと仕事してくれ…。

以下ネタバレ。
親父は創造主(アブラハムの宗教における神)で、クルーはアダム。
これは創造主に裏切られ、一人ぼっちでエデンの園を守ることになったアダムと、
東洋思想にかぶれちゃった創造主の話。

親父は、完璧に秩序だてられたデジタル世界を創造するため、
自身に似せてクルーを生み出し、統治の手伝いをさせる。ここまでは創世記の件と同じ。
しかしアイソーの登場によって、親父の価値観に変化が現れる。
完璧を目指すようにプログラムされていたクルーはその変化を受け入れられず、
クーデターを起こして親父を追放。
つまり、創造主の方がエデンの園から出ていってしまうわけだ。

親父の隠れ家にあった銀の林檎は、知恵の木の実のメタファー。
旧約聖書ではアダムは木の実を口にして、善悪の認識を得て追放される。
しかしクルーはこれを食べず、はねのけて床にぶちまける。
これはエデンの園から出ない、父に代わって管理するという意思表示であるとともに、
善悪の認識ができないということも意味している。

親父はといえば、アイソーと会って価値観が変わり、東洋思想にどっぷり。
禅や囲碁を嗜み、本棚には仏典や易経がささっている。

前作と同様に味方が青、敵が赤を基調とした配色をされている中で、
親父だけは白と黒の二色を基調としている点は面白い。
ビンテージのライトサイクルやマスターキーは白、着物は黒といった具合。
これは親父が敵味方から独立しており、また陰陽思想を持っていることを表している。
赤と青は、デジタル世界を支配する西洋的・一神教的な絶対的価値観を表し、
白と黒は一組で、親父の持つ東洋的・多神教的な相対的価値観を表す。
クルーが持っている球体のオブジェと、親父の持っているトゲトゲした多面体のオブジェも
同様の対比であろう。

また、マスターキーから展開されるプログラムは、
おそらく風水で用いられる羅盤をモチーフとしている。
親父の東洋趣味が徹底されていて面白い。

さて、一行は出口を目指して進むのだが、そこでサムが気になるセリフを言う。「東へ行こう」
(英語でなんと言ったかは聞き取れなかった。ニュアンスの違うことを言っているかもしれない。)
東?太陽のないデジタル世界で、方角の話をするのは奇妙だ。
確かに、出口の光を見ながら、サムはクオラに朝日の美しさについて説明するのだが、
ここであえて「東」といったのには理由がありそう。

一つは、親父の東洋思想がより極まってきているため。
もう一つは、私は読んでいないのだが、「エデンの東」が下敷きにあるのではないか。
wiki先生によれば、「父親からの愛を切望する息子の葛藤、反発、和解などを描いた作品」とあるので、まさにそうなのかもしれない。

終盤、クルーは現実世界に侵攻して完璧な秩序を打ちたてようとする。
当初にプログラムされたままで、知恵の木の実を拒否し、善悪の判断がつかないクルー。
陽を極めて陰に転じたと、東洋かぶれの親父はきっと思った事だろう。

気づいたのはそんな所。
しかし、戸田奈津子の字幕が酷かった。
英語をきちんと理解できたわけではないが、
ウィットに富んだ表現とか、上記の宗教的な表現をしてるはずなのに、
無視していい加減な言葉を当てていて、信用ならない。
DVDが出たら再確認したい。


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